新海監督新作「言の葉の庭」

秒速5センチメートル雲のむこう、約束の場所で有名な新海誠監督の最新作が2013年5月31日に公開される。


公式サイト 言の葉の庭

ストーリー
靴職人を目指す高校生・タカオは、雨の朝は決まって学校をさぼり、公園の日本庭園で靴のスケッチを描いていた。ある日、タカオは、ひとり缶ビールを飲む謎めいた年上の女性・ユキノと出会う。ふたりは約束もないまま雨の日だけの逢瀬を重ねるようになり、次第に心を通わせていく。居場所を見失ってしまったというユキノに、彼女がもっと歩きたくなるような靴を作りたいと願うタカオ。六月の空のように物憂げに揺れ動く、互いの思いをよそに梅雨は明けようとしていた。



新海監督の作品との出会いは、かれこれ10年ほど前になる。
とある深夜アニメ(おそらくあずまんが)見てた時のCMで不意に、
今まで見たことがない限りなく実写に近い、でも独特の雰囲気を持ったアニメーションが流れた。
よく見る日常の風景を切り取ってるはずなんだけど、それは全くの別物で、なぜか哀愁みたいなものが胸を突いた。
ほんの数秒のCMだったけど、これがやけに印象に残って必死にwebで検索してみたら自主制作アニメということを知って驚愕。
翌日、今は亡き大宮のまんがの森でDVDをめでたく手に入れたのであった。(まんがの森は当時お世話になったから全店舗閉店は残念)


作品を重ねるごとにストーリーのスケールが大きくなってきたけど、この人の作品の本質はシンプルで、結局は「恋愛」なんですよね・・・。
「叶わぬ恋」で手が届きそうで届かないヒロイン。
ヒロインとは結ばれない結末が共感を呼んでいるのだろうか。

ほしのこえもそうだけど「宇宙」だとか、「日本が南北に分断統治されたセカイ」などの設定は
「叶わぬ恋」を盛り上げるバックグラウンドでしかない。
そういう意味では大げさなプロットに頼れない分、脚本で人間ドラマを掘り下げられるのを期待したい。


おおかみこどもの雨と雪

細田守監督の映画「おおかみこどもの雨と雪」を見てきた。
子育てをテーマにしているだけあって劇場ではわりと子連れもいたように思う。


story 公式より引用 http://www.ookamikodomo.jp/index.html

大学生の花(宮粼あおい)は、彼(大沢たかお)と出会ってすぐに恋に落ちた。やがて彼が人間の姿で暮らす"おおかみおとこ"だと知ることになったが、花の気持ちが変わることはなかった。そして一緒に暮らし始めた2人の間に、新たな命が生まれる。雪の日に生まれた姉は≪雪≫、雨の日に生まれた弟は≪雨≫と名づけられた。雪は活発で好奇心旺盛。雨はひ弱で臆病。一見ごく普通の家族だが、生まれてきた子供たちは、「人間とおおかみ」のふたつの顔を持つ、≪おおかみこども≫だった。そのことを隠しながら、家族4人は都会の片隅でひっそりと暮らし始める。つつましくも幸せな毎日。しかし永遠に続くと思われた日々は、父である"おおかみおとこ"の死によって突然奪われてしまった―――取り残された花は、打ちひしがれながらも「2人をちゃんと育てる」と心に誓う。そして子供たちが将来「人間か、おおかみか」どちらでも選べるように、都会の人の目を離れて、厳しくも豊かな自然に囲まれた田舎町に移り住むことを決意した。


狼男と主人公の花は恋におちて2人(2匹?)の子供を生むわけだけど、恋愛の部分はあまり掘り下げてなくてあくまで子育てがメインだった。
大自然の中、狼人間として生まれた雨と雪を育てるシングルマザー花の奮闘が描かれている。
どちらかという花と雪の「自立」が根底のテーマとして流れていると思った。CGにより書き込まれた背景は必見。


※以下ネタバレ有

コミカルに描かれた成長期

人に触れ合いつつ、無邪気ながら自分が普通とは違うことに少しずつ気づいていく天真爛漫で人懐っこい雪。学校での生活が合わず、森で出会った主
「先生」から様々なことを学び、自分がオオカミであることを自覚していく雨。二人が歩んでいく道は対照的だが、人して生きるのかオオカミとして
生きるのか、自らの道を模索する過程をコミカルかつドラマティックに描かれていて、見ている側は充分楽しめた。
泣いてばかりいた雨が自らの意思を持つようにたくましく成長される過程が印象的だった。

結局は「おおかみ」として受け入れられなかった雨と雪

雪は人間として人間界に、雨はオオカミとして自然界として生きていくことになった。ふたりはとてもはやい段階で親の花の下から離れる、俗にいう
「子離れ」する。(オオカミとして人間界で生きていくという選択肢は完全に切り捨てられている)
雨に限っていえば、もう人として生きるという選択肢を早々に捨ててしまう。これは花にとってはあまりに早くてつらい「子離れ」だけど、人間界にどうしてもなじめない雨が今後「人」として生きていくことの残酷さを花は誰よりも察していたのかもしれない。それでもたった10歳のわが子と接点が無くなってしまうのは花としてはとてもつらいことだ。

最後は一人になった花

一人になっても笑っている花は本当に幸せなんだろうか。
どうもリアリティを感じない、というか違和感を感じた。わが子が自らの選択で自立することは親にとっては幸せなんだろうけど・・・。
この作品、子供側→親への愛情の描写があまり無いのが気になった。最後もあっさり花の元を去っちゃうし。




繊細なCGで描かれた作画は見物で、ストーリー自体はテンポも良かった。そんな難しいことを考えなくても楽しめる作品だしお奨めです。
あと、雪の幼少期の声優(たぶん子役?)の演技がかなり良かった(はっきり言って他の俳優の演技が霞むくらい)。
結末は賛否両論だろうかと・・・。


サカサマのパテマ

数年ぶりにblog再開。というのも以前から注目してた吉浦監督の新作が動き出したのでちょっと書いてみる気になっただけだったりする。

吉浦康裕とは編集

イブの時間が有名だけど個人的にはペイルコクーンの印象が強い。


D

【ストーリー】
その世界は、どこまでも予想外。

どこまでも、どこまでも坑道が続く地下世界。
狭く暗い空間であっても、人々は防護服を身にまとい、慎ましくも明るく楽しい日々を送っている。
地下集落のお姫様であるパテマは、まだ見ぬ世界の先に想いを馳せて、今日も坑道を探検する。
お気に入りの場所は、集落の「掟」で立ち入りが禁止されている『危険区域』。
これまでに見たこともない広大な空間には、幻想的な光景が広がる。
世話役のジィに怒られながらも、好奇心は抑えられない。
いつものように『危険区域』に向かったパテマは、そこで、予期せぬ出来事に遭遇する。
何が『危険』であるのか、誰も彼女に教えてはくれなかったから。
隠された"秘密"に触れる時、物語は動き出す―

公式より引用 http://patema.jp/#


ナウシカっぽいってコメントがあったけど、こういう文明の滅亡後的なストーリーって
最近あんまし見なくなった気がする。
AKIRAとかエヴァとか8,90年代のアニメってわりと荒廃した世界が舞台になってるアニメが多くて、
自分、そういうの好きですね・・・。
ジブリなんかもテーマがわりと重かった気がする。
(バブル後の90年代なんかは社会的にも閉塞感が漂っていてそれが作品に反映していたのかも)



村上春樹の「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」とか、灰羽連盟BLAME!
あとドラクォとか閉ざされた世界的なプロットの作品って
他にも結構あると思うけど、どれも設定が緻密だったりする。
(プロットとしては練りやすいのかもしれない)
「閉塞感」って視聴者を感情移入させる重要なパーツなんだろうか。


BGMはあの大島ミチルさんです。


あと、廃墟にノスタルジーを感じる廃墟フェチにはたまらないですね・・・
CGを見るだけでも価値があるかと。
とりあえず吉浦監督の今後に期待してます。

D

「イヴの時間 劇場版」 [Blu-ray]

「イヴの時間 劇場版」 [Blu-ray]

スタジオ六花の吉浦氏の新作が凄そうだ。

吉浦氏の存在を知ったのはペイル・コクーンという作品を見てからだった。ヨドバシカメラでDVDが売っていて、その装丁に惹かれて買ったのがきっかけだった。

こ の 世 界 の あ ら ゆ る 人 間 は 知 っ て い た 。
過 去 を 知 る こ と は 、 こ の 現 実 の 不 幸 を 知 る こ と だ と 。

その閉塞的な世界観や、緻密な背景CGに一気に惹きこまれて、それが自主制作作品だったことに驚いた。一貫したテーマの基、一つ一つのシーンに独特の間があり、短編ながら映画として成り立っていることに感動した。

自主制作作家として有名なクリエイターに新海誠氏がいるが、新海氏の作品は場面場面を叙述的に描いていく、どちらかといえば小説に近いのに対し、吉浦氏の作品は映画に近いと思う。

どちらにしろ、両氏は日本のアニメ業界を背負っていく程の才能の持ち主だ(これ程の才能の持ち主が制作会社に関わっていないのは複雑な気持ちだけど、一人でアニメを作り、それを気軽にアップロードできるようになったのはクリエイターとしてとてもいい世の中になったと思う。
これからの動向に注目だ。

ペイル・コクーン [DVD]

ペイル・コクーン [DVD]

やっぱり完全オリジナルこそが「創作」なんだと思った。

正直ニコニコにどっぷり浸かっているとMADに対して抵抗が無くなっちゃうんだよなぁ。今ならそれなりに楽しめるしMAD職人の作品に対する愛情、というか解釈みたいなものを感じる時もある。

ランキングの上位から下部までMADやらアニメ本編やらが犇く中、この自主制作アニメ「さかなのうた」がランキング一位を獲得したのはちょっと感動したし、音楽まで製作者が作って歌まで歌っちゃって(しかもうまいし)ホント脱帽だよ…。他人の才能に嫉妬したのって久しぶりだ。(でも作者のBLOG見たところ事務職に就職したようだ)
作者には是非これからも自主制作活動続けてもらいたいな。

作者のBLOGにはコンテストに出さないのか、という声が寄せられているが。
今現在、「さかなのうた」の再生数は20万近くまで伸びている。
そして、たった一人が創った作品に対して賞賛をおくるニコニコユーザー達が数え切れない程存在し、その中には映像制作業界の人間もいるだろう。

もはやニコニコ動画はクリエイターにとって最高の舞台となったのかもしれない。傑作には必ずアンチが付くが、「良い物は良い」と素直に認められる良ユーザーがそれを上回るだけ存在しているわけだし。

作者:犬尾さんのhp http://ao-den.com/

アニメ業界のビジネススタイルと自主制作アニメの可能性


http://d.hatena.ne.jp/pmoky/20071028/p1


こちらでアニメ制作費予算の流れについて紹介があった。
アニメの制作費が一話30分で1000万くらいらしい、てことは1クールで1億2000万。制作費が莫大、という時点でテレビ局と代理店を介す今のビジネススタイルから抜け出すことなんてできないんじゃないだろうか。

ところでwebで動画配信ビジネスといえばGyaOが有名だ。コマーシャル収入により視聴者は無料視聴が可能だが……。

2008年8月期には黒字化を目指すとしているが2007年8月期決算では、コンテンツ調達費の負担が大きく、さらにCM収入が伸びず、GyaO事業は(前期からは赤字幅は半減したが)約30億円の赤字となっている。アナリスト向けの説明会でのUSENの発表によると、登録会員のうち週に一回以上閲覧するユーザーは300万人程度とみられ、CMを出稿する企業は効果を測りかねている、という。既存のテレビ各局は、GyaOを脅威に感じネット配信事業に乗り出す一方で、ネット配信事業の収益性には依然として懐疑的な見方もある。

GYAO! - Wikipedia

そもそもコンテンツが全く充実していない。youtubeやニコニコなどで著作権が散々無視されてupされている時点でGyaOの存在価値は無いに等しい。でも、これから著作権を無視した動画upはどんどん規制されていくだろう。だからといってあえてテレビじゃなくてwebを選ぶスポンサーなんてまずいない。なぜならビジネスとして全く結果がでていないから。

仮に中間搾取のビジネススタイルから抜け出せるとしたら「制作費の削減」しか思い浮かばない。そういう意味では、クリエイター個人で一つの作品を作り出してしまう、「個人制作アニメ」しか可能性は無いと思う。有名なのが新海誠で、彼の凄いところは個人制作アニメを一つのビジネスとして成功させたところだ。
たった一台のmacで作った作品がDVDで十万枚以上の売り上げ。これってとんでもなく凄いことだ。制作費なんてmac一台の値段くらいってことでしょ。人件費もかかっていない。ただ、制作費に何億もかけ、その道のプロ達が作りあげる、世界的にも有名なジゃパニメーションの域には達していないのが現状だ。

ただ、これからのPCの進化により可能性が広がると思う。もし、スポンサーを介さないプロダクションが続々と生まれ、独自のビジネススタイルを確立できたら……。日本のアニメーション業界に一筋の光明が見える、かもしれない。

12月発売予定の VOCALOIDクリプトン | 鏡音リン・レン act2(KAGAMINE RIN/LEN act2) | クリプトン

公式サイトのシルエットが凄い気になる……。
12月ってわりと近いよなぁ。初音ミクが発売されたのが今年の8月だから約4ヶ月のインターバルとなる。

そこで気になるのがクリプトンが次はどういった路線で攻めてくるのか。
そもそもクリプトンが凄いところはこの初音ミクブームをある程度狙っておこしたという点だ。

ニコニコ動画という「聖域」で愛されてほしい
 ニコニコ動画では、初代VOCALOIDMEIKO」を使った動画がすでに人気だった。佐々木さんは「初音ミクもニコニコの視聴者の方々に愛されてほしいと淡い期待を寄せていた」としながらも「ニコニコは私のような制作・販売サイドの社員が邪念をもって接してはいけない『聖域』のように感じている」と謙虚だ。

 販売目標は「見失った」という。「現時点で、音楽制作ソフトとしてはありえない記録的な本数なので……。むしろ今回の販売本数に気をとられず、新しいシンガーや、操作を分かりやすく解説した本などを充実させて、末永く愛用していただける楽しいVOCALOIDを作っていきたい」

異例の売れ行き「初音ミク」 「ニコ動」で広がる音楽作りのすそ野 - ITmedia NEWS

でも、狙い通りのブームが起きた今、状況は大きく変わった。VOCALIDの可能性についてはいろんなサイトやブログで散々語られている。それだけ注目度は高い。

バーチャルアイドルはあと2作展開する予定だ。第2弾はかわいらしくパワーのある声質で、リスナーが元気になるようなアイドル、第3弾はクールなアイドルになる可能性が高いといい、「ニコニコ動画で人気の声優」を起用する可能性もあるという。並行してアイドル以外の企画も展開したいという。
異例の売れ行き「初音ミク」 「ニコ動」で広がる音楽作りのすそ野 - ITmedia NEWS

かわいらしくてパワー……。
で、2作目でクリプトンが試されるのが「ミクとの差別化」だと思う。
DTMでブームを起こしたクリプトンは更なる進化を求められているのでは。とあるブログでは、将来的にはVOCALOIDは歌手をも脅かすのでは、とまで言われる加熱ぶり。
キャラクター・ボーカル・シリーズ」を確固たるジャンルとして築き上げたクリプトンに求められるのはDTMとしての技術的な進歩。
もはやニコニコ動画で活躍する職人達は、キャラクターが可愛い、程度じゃ満足できないはず。ミクよりもっとおもしろく、リアルな曲が作れるか。

とにかくミクの妹がアイドルとしてブレイクできるかは、プロデューサーのクリプトンにかかっている訳です。